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現ライター、豊島ミホのブログです。雑記帖ゆえ雑文が書かれていきます。カテゴリの「はじめに」も是非お読み下さいませ。


by 豊島ミホ
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坂崎千春『片想いさん』(5/2)

こんばんは豊島ミホです。
素晴らしい本と出会ったのでここに記しますっ!

坂崎千春さんの『片想いさん』

片想いさん (文春文庫)

坂崎 千春 / 文藝春秋


装丁、多分単行本で見たことある。タイトルも憶えてる。
表紙のイラストのさくらんぼちゃんがかわいい。
でも手に取らなかったのは多分、
このさくらんぼちゃんが主人公の
ファンタジーかつポエジーな
ショートストーリー集だと思っていたから?
坂崎さんが「Suicaペンギン」の作者である
イラストレーターさんだとは知っているので、
そういう……絵本に近い雰囲気の本なのかな、と思って
単行本の時はスルーしてしまったんだと思います。

文庫になったこの本を、夫が買ってきました。
「僕はもう読んだ。○○ちゃん(※私の本名)好きだと思う! 読んで!」
とのこと……。
私と夫の趣味は1%くらいしかかぶっていないので、
ほんとかよぅと思ったのですが、そこまで強く推されることも
滅多にないため、では読んでみるかとページをめくったところ……

面白い!

この本、まったくファンタジーなどではなく、
エッセイ集なのです。
片想いばかりしている「片想いさん」は、
なんと坂崎さん自身。
いちまいの絵はがきのように描かれた
片想いの思い出と、その思い出にまつわる
レシピや物語が紹介されています。
(お料理と本が並列って、言われると唐突に感じるかもしれませんが
 坂崎さんのイラストや言葉で紹介されているとわりと自然です。)

試しに40ページほど読んで「これ、すごい!」と
言ってしまったのは、とにかく語り口がきれいだから。
坂崎さんの文章は、イラストと同じで、
気取ったところがなく、親しみやすい感じながら、
無駄がないし上品でした。
ひょええ。(←こういうのが無駄かつ下品)

恋愛エッセイというのは
陶酔や自慢が見え隠れしたり、
あるいはそう見られるのを著者が意識しすぎて
必要以上に自分を貶めているのが目につく文に
仕上がってしまったり……しがちだと思うんです。
でも坂崎さんの文章には一切それがない。
なぜか?

その回答は「Letter」という項目にありました。
(そうそう、紹介し忘れましたが
 この本はアルファベットの頭文字の順番に
 タイトルが並んでいるんです。こういうの、憧れだよね!)
少し長くなりますが引用します。

どこで目にしたのか覚えていないのだけれど、
日記帳に書きとめておいた言葉がある。
「芸術は親愛なるただひとりの人に送る手紙」
芸術というにはささやかすぎるものだけれど、
わたしは今まで何冊かの絵本をつくってきた。
つくっているときに「この本を多くの人に見てもらいたい」と
考えたことはなかった(出来上がってから多くの人に読まれるのは、
もちろん嬉しいことだけれど)。
わたしのつくる本は、一冊一冊が「ただひとり」に向けた
ひっそりとした手紙だった。

(p.74)

そうか、この本もきっと「手紙」だから
赤の他人の目なんて意識しないで、
でも相手に宛てたものだから丹念に綴れるんだな。
と、勝手に納得しました
(実際、後でそうとわかる文章も出てきます)。

文章がきれい、この1点だけでも
色んな人に読んでもらいたい! 
坂崎さんが強くすすめなくても私が横からオススメしたい!
そんな本です。



う〜ん、でも、もちろんきれいっていうだけじゃなくて……。
この本は、読んでいるうちにだいぶ、
坂崎さんのことが気になってくるんですよね。
最初の5本を読んだくらいだと、
周りに、わりと普通に男の人がいて、普通に話せて、
なんていうんでしょう……
ある程度もてる子(あえて「リア充」という言葉は使いません)
なのかなとぼんやり想像していたのですが、
途中から、

あれ? 結構もてないな……
えっ? まじで? まじでまじで……?(汗)


という感じになってきて(ごめんなさい)
「この状態はまごうかたなき『片想いさん』や!」
と思い知らされる。
でもね! でもねでもね……!
そういう、片想いばかり累積する状態を、
どうとらえたらいいか、っていうヒントがこの本には詰まっている!
と思う……。

いつかわたしをまるごと認めてくれる人が現れる。
そうしたら、その人とふたりで世界を駆け抜けたいと、
今でも夢みている。

(p.121)

私はこの文章を読んだ時、特にふるえました。
そうだよ! と思って。
ちなみにこの後は
「でも今はひとりで立っている。
 そう悪いもんじゃないよ、と思いながら。」
と続くのですが……
「そう悪いもんじゃないよ」と思うことも大事だけど、
やっぱり「夢みている」っていうことが一番大事だと思う。

今はすごく情報や解釈が溢れてて、
両想いになれない自分のことを、分析したり
論理で攻撃してしまったり……
そこまでいかなくても
「やっぱ自分が悪いのかな。どこかおかしいから
 両想いさんじゃないのかな」
とかって考えてしまいがちだと思うんですけど
(私も結婚するまでは、なにかとその状態に陥ってました)
そんな必要、ない。
ない! って、坂崎さんが大事な人へ宛てた手紙であるところの
このエッセイ集を読んでいると、思えるんです。

だいたい、「片想いさん」というネーミングが
今見るとすばらしいと感じます……。
これが「モテないさん」だと、一気に自分主体の感じに……。
なる。よね。
「片想い」は相手がいるからできること。
だから作品全体が、きれいに見えるんだな〜。



ちなみに、全部恋愛話というわけではなく
坂崎さんの幼少、青春時代などのエピソードも
ちょっとだけ挟まれていますが、
個人的にはそこにもだいぶ心つかまれました。
坂崎さんの人となりが伝わってくる気がして。

本が終わりに差し掛かる頃にはもう、坂崎さんっていうか、
ちはるちゃん! っていう感じでした……。
もしちはるちゃんが身近にいる同い年の女の子だったら……
って考えた(実際の坂崎さんは1967年生まれだけど)。
私はなんだかんだヤンキー文化を経由してる人間なのでw
こんなに心清いちはるちゃんとは、
めちゃくちゃ仲良くはなかったかもしれないけど、
でもすごく幸せになって欲しいって思ってるだろうな。

そういうふうに思って読んだので、
最後の最後、文庫版の書き足しまで読んで本を閉じた後、
ぽろっと泣きそうになりました。
なんで泣きそうだったかは、読んだ人だけにわかる秘密です。



もう長くなり過ぎて余談も余談ですけども、
紹介されている本がことごとく面白そう!
実際読んでみたくなる本ばかり!
多分近々読んでいくと思います。
by refri5erat0r | 2015-05-02 22:39 | 読んだものの感想