雑記帖としま fengdao.exblog.jp

現ライター、豊島ミホのブログです。雑記帖ゆえ雑文が書かれていきます。カテゴリの「はじめに」も是非お読み下さいませ。


by 豊島ミホ
プロフィールを見る

槇村さとる『白のファルーカ』(12/20)

別マの名作レビューコーナー
「クラシックスこんにちは」でご紹介した、
槇村先生の長編『白のファルーカ』をここでも紹介したいと思います。

っていうか書ききれなかった感想が多すぎて
それをここで書かせていただきたいと思います……。

白のファルーカ 1 (集英社文庫―コミック版)

槇村 さとる / 集英社

白のファルーカ 2 (集英社文庫―コミック版)

槇村 さとる / 集英社

白のファルーカ 3 (集英社文庫―コミック版)

槇村 さとる / 集英社

白のファルーカ 4 (集英社文庫―コミック版)

槇村 さとる / 集英社



文庫で全4巻。1987年〜89年の別マ掲載作。
フィギュアスケートの中の「アイスダンス」を扱っています。
(男女で踊るやつで、なおかつ放り投げたりしないほう。)
まだ大会出場経験もない、ひよっこダンサーである樹里が
男子シングルから転向してきた天才スケーター・松木恵に
パートナーとして指名される。
前半はふたりがアイスダンサーとしての階段をのぼっていく
正統派スポ根少女まんが……の80年代進化系(テンポが軽くなってる)。
後半は、話がふたりの家庭環境までさかのぼり
かなりサスペンスちっくな人間ドラマが繰り広げられる。

というのがざっとした内容ですが
(ほんとにざっとですんません)
内容じゃなくて感想を! 書きますな。



まずびっくりしたのが、内容の「古くなさ」。
私、フィギュアは前回冬季五輪からのにわかファンですが
(4年経ってもにわか感www 一番盛り上がってる時入るとそうだよね。)
一応フィギュアの競技のざっとした歴史は知っているつもりで……
87年っていったらルールも違うし今よりみんなジャンプ跳べないし
「今のテレビの中のフィギュア」より古くてもそれは仕方ないな。
くらいの気持ちで読み始めたのですが、
逆に
「今!? これ今の話?!」
みたいな内容でびっくり……!

まず松木恵が4回転跳べて世界でメダル争える設定www

87年なのに高橋大輔いるよー><
当時こんな男子スケーター居た? 居ないでしょ!
しかもその生き生きと描かれていること……。
「氷上の王子様☆」みたいな感じじゃないんですよ。
俺様だし短気だし! でもその分情熱と表現力はぶっちぎり☆
っていう非常に人間くさいキャラクターで……。
ふたたび連想するのは大すk……げふんげふん!
(顔が全然似てないから遠慮なく言ってるんですけど。)



さらにフィギュアまんがとしての完成度の高さが
やばいっす。
私アイスダンスって正直興味なかったんですよ。
やっぱシングルに比べると国内で盛り上がってないし。
どこを見ればいいのか……? 何を楽しめばいいのか。
全然わかりませんでした。

でも『白のファルーカ』を読んだだけで……

NHK杯のアイスダンスに号泣

ほんと、それ以外なにも補足の調べものとかしなかったのに!
文庫4冊読んだだけなのに!
見え方が違うんですよ、染み方が違う!!!
あとそれぞれのカップルの実力がちゃんとわかってしまった。
点数と見比べて「え、なんでこれがいいの?」みたいなのが全然なかった。
『白のファルーカ』が、アイスダンスのガイドとして
完璧だったということです。

これだけのものを描くのに、どれほどの取材が要ったんだろう……。
と思います。(前述の、「当時の現実を超えた内容」含めて。)
逆に今、こんだけ盛り上がっているフィギュア界を前にしても
こういうまんがは出てこないのではないか。
と思うほど。あまりに振り切れたフィギュアまんがの名作です。



あと……本誌の原稿ではまったく触れなかったんですけど
この作品の、フィギュア以外の部分?
ネタバレになるのであんまり書かないでおきますが、
後半、人間関係がぐちゃぐちゃになって愛憎劇が発生して以降の部分も
私はすごい好きでした。
闇が描かれ切っていて、なおかつ終わりに光があったから。

文庫版では、4巻の巻末に槇村先生自身による解説がついていて、
この作品の終盤がいかに自分にとって特別であったか……
ということが描かれているのですが
「そんなの言わなくても全部伝わる!」
っていうくらい伝わりすぎました……
最終話あたりはもうマジで 涙でページが見えない状態になってました

ちょっと飛んだ話になっちゃうけど
業があってよかった。
って思ったんです読みながら。
すごいつらい経験とか、自分の中のイヤ(っつーか悪)な部分とか。
そういうの、それほどない人もいるでしょ……見ないですむひとも……
へんなひずみのない家庭で育って
小さい頃から周囲の愛情を疑わなくてよかったひとたち。
私だってそーならよかった……
そーだったら 同じスペックで生まれてもこれほどひねくれずに済んだ
って思っちゃうこと いっぱいありましたけど
でもそうじゃなくて……。
そういう経験あるからこそ、今共感して泣いてる、
ってわかって、またそのことに涙……みたいになっちゃったんですよ
恥ずかしながら////

フィギュアにあんま興味なくても
自分の家とか育ちとかに なんかもやっとしたもの持ってる人には
読んで欲しいな……。
(そう「育ち」が深く関係してくる話なのです後半は。
 ほんっとーに直球でそこに立ち向かっていきます。)
若いとあれかもしれない。同族だからこその反発を感じるかもしれないけど
そろそろそーゆー……自分の生育歴への割り切れなさに踏ん切りつけたい
っていう年頃の人は。絶対はまると思います。
槇村先生30代前半の作品なんだよね。
だからそれくらいか、それにもうすぐ差し掛かるような人は。
読んでみるとスッと何か手放せるかも〜と思ったりします。。。



ちょっと散漫な感想で申し訳ないのですがこんな感じです……。
読みどころが多すぎて!
私が書店員だったら絶対に今売ります全力で売ります。
連載では人気なかった……とも槇村先生があとがきで書かれてましたが、
確かに少女向けのものとしてはちょっと……
コアすぎるかもしれない。いろいろ。
でも20代後半〜40代向けとしてはまだ売れるポテンシャル秘めてる! と
個人的にはかたく信じています。
by refri5erat0r | 2013-12-20 07:02 | 読んだものの感想