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現ライター、豊島ミホのブログです。雑記帖ゆえ雑文が書かれていきます。カテゴリの「はじめに」も是非お読み下さいませ。


by 豊島ミホ
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宮本常一『忘れられた日本人』、もしくは「ファンシージゴロに騙されたい」(8/3)

こんばんは豊島ミホです。
文芸あねもね公式ブログを更新してこっちにも登場!
あちらでは「文芸あねもねR」の新作リリースをお知らせしてきたので、
ぜひご覧下さい〜☆
今回のリリース作品は、南綾子さんの「ばばあのば」(朗読:杉田智和さん)と
三日月拓さんの「ボート」(朗読:田中敦子さん)です!

あっちでちょろっと書いてきたのでここにも書きますが、
私の「真智の火のゆくえ」は朗読用に全面改稿を終えています。
なんせ長かったからね……つД`)
長さで次点に来る「ばばあ」で79枚→1時間48分。
160枚を越す原稿なんて絶対に朗読をお願いできない!! とわかっていたので、
企画初期段階で朗読用バージョンを作ることを相談させていただいてました……。
いや〜〜後悔しましたね。空気読まずにあんなに長い話を書いたことを。
書くのは簡単だったけど削るのは地獄だったね。
詳細は(たぶん)リリース時に!



さて今日の雑談は、『忘れられた日本人』を読んだよ! っていう話です。

忘れられた日本人 (岩波文庫)

宮本 常一 / 岩波書店


岩波文庫ォォォ……。久々に買いました。
カタそうだよね。岩波っていうだけで。
私も担当さんの紹介&斉藤孝先生の紹介文がなければ一生読まなかったと思います。
しかもまた……拾い読みです。すんません。
エロそうな話だけ先に読みました。まだ全部は読んでません。
今日はとりあえずその感想です。




著者の宮本常一という方は民俗学者
(「学者」っていう紹介も多分語弊がある感じなんだけど……
 結果的に言えば民俗学で有名な人なんでそうハショるしかない)。
不勉強ながら存じ上げませんでした。
戦中〜戦後にかけて、日本じゅうの村を旅して歩き、
その土地に眠る文献と、土地の人の話を徹底調査した方です。

調査とかー! (読むのが)面倒臭い感ーー!!!
しますが、そんなこともなくて、
『忘れられた日本人』は、宮本さんが「老人の話」を聞いてまとめたもの。
村人Aの話……みたいなのが、西日本のもの中心に収められています
(宮本さん自身も山口のご出身)。
タイトル通り、今はもうない日本の文化、風景、人!!! の姿が描かれています。

まあ、私が読んだのは

今はもうないエロ

の部分ですけどね……。
田植えとか普通にやっても暇だからずっと下ネタ話してる!
平成の女子会でもそんな話せぇへんってレベルの話をかましてる! とか
(from「女の世間」)。
昭和のじいさんばあさんが若い時の話だから、明治とか、そういう時代のことですよね。
昔の話って、公式のものになればなるほど、
身綺麗な「いい話」になるけど、実際はそんな折り目正しいことばっかりじゃない。
みんな貧しいし、もの知らないし……むちゃくちゃなことも起こってる。
(エロもすごいけどグロもすごかったすね。。。。人の命が軽すぎる。。。)
現代が、温度管理されたきれいな温室だとしたら、明治の農村は毎日が暴風雨。
そんな暴風雨の中でタフに動物ぽく生きてる、私たちのご先祖様!
……の姿が、『忘れられた日本人』の中では、老人の語りを通して鮮明に描かれています。



そんな中でも私に超HITしたのが、「土佐源氏」というお話。
高知の山奥の橋の下に疎末な小屋をつくって住んでいる、
自称盲目&乞食のじいさんの、身の上話の聞き書きです。

実はこの話、宮本さんが「何を」聞きにいったのか、明言されてないんですよね。
旅人である宮本さんが、地元の名主??らしい「那須のだんな」の紹介で
そこに来たことは明かされる。
でもいったい、何を調査している間にどういったいきさつでそこに行き着いたのか、
話の中では特に言及されないのです。

わからないまま……エロ話が展開される!

【じいさんの年表 <完全ネタバレ>】
10歳頃 子どもの遊びの延長で同年代の女子とエロいことを始めてしまう。
    仲間うちで唯一の男子だったので、ちょっと年長の女子たちの遊び道具にされる日々。
15歳  牛のテンバイヤーに。口八丁で適当な牛を農家に売りつけ金に換えるお仕事。
20歳  転売屋の親方が死んだので、得意先&親方が食いまくっていた女性たちを
    まるごといただく。女性っていってもみんな後家で適当な年齢だったもよう。
数年後 後家さんたちのうち、あるひとりの女性の娘をつまみ食い、そのまま駆け落ち。
    いったん真面目に生きる決意をする(ベタ)。
3年後 商売で出入りしていた役人の家の嫁さんと不倫。4、5回会った程度だが
    何か心に来るものがあったらしく、バレないうちに身を消す。妻を置いて田舎に戻る。
    また牛の転売屋を始める。ちなみに妻は追いかけて田舎に帰ってきた。無視。
?年後 商売で出入りすることになったちょうすごいお屋敷のおくさま(おかたさま)に恋。
    おかたさま、めっちゃ牛好きで、屋敷の人間にもバレないように牛をみがいていた
    (それ絶対バレバレやんて感じするな)。
    牛がきっかけで(←このくだり、読むとちょうドラマチック)結ばれる。また不倫。
半年後 おかたさまが風邪をこじらせて肺炎で死ぬ。超泣く。
    その後、やけくそで火遊びがひどくなる。
50歳頃 目が痛くなって失明。行くところがなくなり妻のところに戻ると、
    妻は泣いて喜んだ。
80歳  やさしかった女性のみなさんを思い出す日々です。
    今の話妻には内緒でお願いします ←now



……以上じいさんの一代記をエロい描写ありで読まされます!
こうやって年表つくってみると、ただの人でなし女たらしのような気がするしょ?
しかし違うんだなこれが!!!
源氏物語の光の君が、年表つくったらただの女たらしなのと一緒で、
このじいさんは、心が! 源氏レベルなのですよ!

ピュアなんですよ!!!!

そんなあらすじで「ピュアな」話あるか!!!! って言われるかもしれませんが
そこが語りの妙! 
傍からみると「簡単な不倫」でしかないことが(※さみしい奥さん寝取るだけ)、
じいさんの目線だとすごく勇気の要る難儀なことになっています。
しかもじいさんは、やくざな身の上に引け目があって、
身分のある女性が 自分を一人前の人間として扱ってくれた時に心が動く
っていう法則があるんよね。その二回の経験を、人生の中で特別な恋にしている。
単純だけどピュアやろ……?
そしてなんといってもラスト近くの語り。長いけど引用します……!



どんな女でも、やさしくすればみんなゆるすもんぞな。とうとう目がつぶれるまで、
女をかもうた。そしてのう、そのあげくが三日三晩目が痛うで見えんようになった。
極道のむくいじゃ。わしは何一つろくな事はしなかった。
男ちう男はわしを信用していなかったがのう。
どういうもんか女だけはわしのいいなりになった。

わしにもようわからん。男がみな女を粗末にするんじゃろうのう。
それで少しでもやさしうすると、女はついて来る気になるんじゃろう。


<中略>

女ちうもんは気の毒なもんじゃ。女は男の気持になっていたわってくれるが、
男は女の気持になってかわいがる者がめったにないけえのう。
とにかく女だけはいたわってあげなされ。かけた情は忘れるもんじゃアない。




これですよ!!!!!!!!!
私陥落ですよ!!!!!!!!
男の人はまじナチュラルにこれくらい思ってたら余程容姿がひどくない限り爆モテするよ
容姿点20点くらいあればこれでいけるよ!!!
ファンシージゴロになれるよ!!!!!

……ま、なんで妻だけ扱いが雑なのかっていうツッコミもあるけどね。
てか、この話の中に自分が出てくるなら絶対に妻ポジションっていう確信があるけどね。
このド天然ジゴロに25年くらい(推定)放っておかれた上、
行くところがなくなったという理由で戻って来られても
「あなた!!(泣)」って言っちゃう負け組女子ポジション。。。
25年。。。私ならありうる。。。

これくらいのド天然ジゴロに騙されたい

騙され気分が味わえる玉稿

っていうことですかね。まとめとしては。
それまとまってんのかな。まとまってねえよな。
エロとかもう関係ないじゃんね。
でも生々しい性描写があるからこの話は引き立っているんだと思うよ。
恋愛描写だけだと何も響かないと思いますよ。ピュアすぎて。
ピュアとエロが両立しているところに、「土佐源氏」の魅力はあるよ。



ちなみに宮本氏のあとがきも、部分的に読んだのですが、
この「土佐源氏」に関して、一行こういう断りがあるのですよ。

このはなしはもう少しながいのだが、それは男女のいとなみの話になるので省略した。


省略してんじゃねえええええええええ!!!!

そこ重要っしょ?!
アダム徳永の教えを超えることが語られてたっしょ絶対!!!!!

私はぴんと来ました このじいさんのエロ話に性的技巧に関する話が含まれていること
このじいさんの性格設定から言って それが現代のAVの100万倍くらい役立ちそうなこと
そこはシェアしてよマジで! 
ひとりで10回イイネ! するからシェアしとこうよ宮本氏!!!

しかし省略部分は、初出時に既に削っていたとのこと、
もうどうしても読むことができないのでした。
(でもちょっとググると、削った時の編集者とのやりとりとか出てきて
 私の推測がそんなに的外れでもなさそうなことが判明しました……。やっぱり……。)
あああ。。。
あの文豪の幻の初期作品! とか創作メモ! とか出てこなくてもいいから
とにかく「土佐源氏」の削られた部分が出てきて欲しい。

昔の人は。今の人が知らないことを知っていたりするよ。本当に。

私は長い間歩き続けてきた。そして多くの人にあい、多くのものを見てきた。
その長い道程の中で考え続けた一つは、いったい進歩というのは何であろうか。
発展とは何であろうかということであった。すべてが進歩しているのであろうか。


これは巻末の解説(網野喜彦氏による)に引かれた、別の宮本氏の著作からの文です。
So 人間が進歩しているかどうかは疑わしい。
特にエロに関して。
心のままに! フィーリング優先で!
行われた(かもしれない)「いとなみ」が憧憬とともに思い浮かぶ一編でした。
おわり。
by refri5erat0r | 2013-08-03 03:45 | 読んだものの感想